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仲介手数料は経費に計上できる?店舗の賃貸契約で注意すべきこと

01-21-2020

事業を始めるときは、事業計画はもちろん資金計画もしっかり練ることが大切です。店舗を借りる場合には、「どのような費用がかかるのか」や「どのように計上処理をすればよいのか」を知っておくと役立ちます。この記事では、店舗を借りるときに発生する初期費用とそれぞれの仕訳方法、および注意点などについて解説します。

店舗を借りるときの初期費用とそれぞれの仕訳について

はじめに、店舗の賃貸契約で必要になる一般的な初期費用と、その仕訳方法についてみていきましょう。

店舗貸借時の初期費用1.保証金

初期費用の1つ目は保証金です。保証金とは家賃の滞納に備える預け金で、滞納が発生したときには保証金から家賃に補填される仕組みになっています。保証金の目安は家賃10カ月分ほどで、基本的には解約時に戻ってきます。ただし、「保証金の償却年3%」「解約時償却2カ月」などの条件が設定されている場合は、滞納していなくても一部の保証金が戻りません。前者の場合は、1年ごとに保証金の3%が貸主の収益になります。後者の場合は、解約時に家賃の2カ月分が償却され、戻ってくる保証金が減ってしまうのです。

保証金の仕訳方法は返還部分と償却部分で異なり、返却部分は「保証金」として処理します。一方、償却部分はいったん「長期前払費用」で計上してから、月割償却で処理します。償却期間は基本的に5年ですが、賃貸契約期間がこれより短かった場合は賃貸契約期間を償却期間として仕訳するとよいでしょう。

店舗貸借時の初期費用2.前家賃

初期費用の2つ目は前家賃です。前家賃とは、契約時に当月分の日割家賃と翌月分の家賃をまとめて支払うことを指します。契約月と翌月にそれぞれ支払いをすると二度手間になるため、手続きを簡略化するのが狙いです。たとえば、契約日が6月20日だとしたら、月末までの10日分と翌月分の家賃を前家賃として一括で支払います。勘定科目には「支払家賃」を使います。

店舗貸借時の初期費用3.共益費または管理費

初期費用の3つ目は共益費や管理費です。賃貸物件の共用部にあたるエントランスや廊下、エレベーターなどの修繕管理費や水道光熱費などがこれに該当します。毎月発生する費用なので、家賃に含まれているケースも少なくありません。共益費や管理費は、基本的に「支払家賃」の勘定科目で計上します。ただし、共益費や管理費に水道代などが含まれている場合は、その金額を「水道光熱費」で処理しましょう。

店舗貸借時の初期費用4.礼金

初期費用の4つ目は礼金です。礼金は貸主へのお礼を意味する慣習的な料金で、地域によっても扱いが大きく異なります。「貸してくれてありがとう」という気持ちを伝えるためのお金なので、解約時にも返金されません。使用目的もあいまいなので、礼金を不要とする物件も増えています。礼金が設定されている場合、その金額は家賃1カ月分程度になるのが一般的です。礼金を支払ったときは、「支払家賃」または「雑費」として計上します。

店舗貸借時の初期費用5.火災保険料

初期費用の5つ目は火災保険料です。物件を店舗として借りるときには、火災保険の加入が条件になっているケースがほとんどです。接客業や高価な商品を扱う業種で開業する場合は、損害保険などにも加入しておくほうが安心でしょう。

火災保険や損害保険などの保険料は、「支払保険料」の勘定科目で仕訳します。1年分などまとめて前払いして、翌期以降の会計期間にまたがってしまう場合は、その部分を「前払費用」として資産計上して繰り越します。仕訳の方法は2通りあり、1つ目は支払いをしたタイミングで「支払保険料」と「前払費用」に分けるやり方です。また、支払いの際に全額「支払保険料」として仕訳して、決算時に繰り越す部分を「前払費用」に振り替えてもよいでしょう。

店舗貸借時の初期費用6.仲介手数料

初期費用の6つ目は仲介手数料です。仲介手数料は物件の仲介業務をした不動産会社に支払う費用です。成功報酬なので、たとえ不動産会社と媒介契約を結んでいたとしても、成約に至らなければ支払う義務はありません。仲介手数料の上限額は宅地建物取引業法で決められています。不動産会社は貸主借主の双方から仲介手数料を受け取れますが、その両方を合計した金額を家賃1カ月に抑える必要があるのです。ただし、別途消費税がかかってきます。

たとえば、1カ月分の家賃が100万円で消費税が10%だった場合、貸主借主の双方から受け取れる報酬額の上限は110万円となり、これを上回る仲介手数料の請求は違法です。仲介手数料を仕訳するときは、勘定科目に「支払手数料」を使いましょう。

居抜き物件を借りる場合の注意点

ここからは、居抜き物件を借りて事業を始める場合の注意点について解説します。居抜きとは前のオーナーから内装や什器備品などを譲り受ける方法です。事業にかかる初期費用を大幅にカットできるだけでなく、すぐに営業が始められることで人気があります。ただし、居抜き物件の賃貸契約には一般的な賃貸契約と異なる点があるので注意しましょう。

仲介手数料以外の手数料が含まれていないかチェックする

賃貸契約の仲介手数料には、広告費や物件案内にかかる交通費、情報提供料など通常の仲介業務にかかる費用が含まれます。そのため、このような費用を別途請求するのは違法です。ところが、居抜き物件を扱う不動産会社のなかには、仲介手数料に含まれる費用を別の名目で請求する業者がまれに存在するため、十分に注意しましょう。

ただし、依頼者の依頼によって発生した特別な費用に限っては、例外的に別途費用の請求が認められる場合があります。たとえば、通常の仲介業務に含まれない種類の広告費や遠方に住む人との交渉で発生する旅費交通費などです。居抜き物件は非常に人気が高く、多少手数料が高くても借主が見つかりやすい状況です。さまざまな名目の手数料が上乗せされているケースも珍しくないので、居抜き物件を借りるときは契約内容をしっかり確認しましょう。

居抜き物件では譲渡契約に仲介手数料がかかる

居抜き物件を借りる場合、仲介手数料が2種類発生します。1つは賃貸物件の仲介業務に対する仲介手数料で、もう1つが内装造作や厨房機器などの譲渡にかかる権利金に対して発生する仲介手数料です。後者を造作譲渡の仲介手数料といいます。譲渡契約にかかる仲介手数料の上限は売買契約と同様です。

売買契約の仲介手数料は、金額区分によって上限額が異なります。
・200万円以下の部分:価格×5%
・200万円超~400万円以下の部分:価格×4%
・400万円超~:価格×3%
たとえば、権利金が150万円だった場合なら、150万円×5%=7万5000円なので、消費税7500円を加えて仲介手数料は8万2500円です。権利金が300万円の場合では、300万円×4%+消費税10%=13万2000円となります。

「譲渡資産明細書」を忘れずに受け取る

居抜き物件の賃貸契約をするときは、前オーナーが残した設備などを買い取る譲渡契約も同時に締結することになります。ところが、譲渡契約の契約書に詳細な情報がなく、「設備一式」「造作一式」などと記載されているケースも珍しくありません。適切な仕訳や決算処理をするためには、譲渡された資産の種類に応じた勘定科目を使うことが大切です。取得年度や金額などの詳細な情報も欠かせません。トラブルを避けるためにも、契約締結時に会計処理のベースになる譲渡目録や譲渡資産明細書を必ず受け取りましょう。

居抜き物件での計上処理

居抜き物件で前オーナーから譲り受けた設備は、基本的に購入代金を資産に計上します。たとえば、時価50万円の資産を50万円で購入した場合、資産の取得価格は50万円です。法人が行う取引の取得価格は時価で処理する点に注意しましょう。資産を無償あるいは時価よりも低価で譲り受けた場合は、時価との差額を受贈益として計上します。

建物附属設備は減価償却資産として耐用年数に応じて償却していきます。ただし、取得価額が10万円未満のものなど消耗品に該当する場合は、譲渡を受けた会計期間の費用として処理しましょう。

店舗の賃貸物件にかかる初期費用を節約するには

お店を始めるときに初期投資を抑えたいなら、居抜き物件を狙うのも良い方法です。ただし、賃貸契約と譲渡契約の両方で仲介手数料がかかってくる点に注意しましょう。店舗の賃貸契約について不安なことやわからないことがある場合は、仲介手数料無料の「サンキュールーム(http://39room.com/)」に相談してみてはいかがでしょうか。物件によってはキャッシュバックが受けられることもあります。気になる物件を今すぐチェックしてみましょう。

【この記事の監修】
大槻陽一 株式会社GKコンサルティング代表取締役

一部上場企業退職後、六本木のレストランにて接客スキルを学ぶ。その後、不動産会社・IT企業での勤務を得て 2013年8月、株式会社GKコンサルティングを設立。現在まで3,000件以上の不動産取引を経験。 取引慣習にブラックボックス的な要素が多く、一般のユーザーにとって不透明な不動産業界を変えるため、インターネットメディアを通じて有益な情報を届けている。

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